体力のこと、将来のこと、日々のしがらみ……。
大人になればなるほど、私たちは目に見えない「枠」の中に自分を閉じ込めてしまうことがあります。
でも、もし「老い」が諦めではなく、本当の「自由」への入り口だとしたら?
「人生に完成はない。生きている限り、未完成の作品である」
日々、アートを通じて「日常の気づき」を大切にしている私が、そんな凝り固まった心をふっと解きほぐしてくれる、素敵な一冊に出会いました。
美術家・篠田桃紅さんの著書
『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』です。
100歳を超えてなお筆を動かし続けた彼女の言葉は、年齢を重ねることへの不安を、静かな希望へと変えてくれる力がありました。
篠田桃紅さんとは?世界が認めた唯一無二の美術家
篠田桃紅(しのだ とうこう)さんは、墨を用いた抽象表現で世界的に知られる美術家です。
文字の枠を超えた「墨象(ぼくしょう)」というジャンルを確立し、ニューヨークを拠点に世界中で活躍されました。
107歳でこの世を去るまで、生涯現役を貫いたその生き様こそが、ひとつの巨大な芸術作品と言えるかもしれません。
心に刻みたい、篠田桃紅さんの名言
本書には、「自分自身の人生をクリエイトする」ためのヒントが散りばめられています。特に印象に残った言葉をピックアップしました。
「自由の意味は、自らによって生きること。無理せず自分によって生きること」
自由とは、何でもできることではなく「自分自身であること」。周りの価値観ではなく、自分の心のままに生きることの大切さを教えてくれます。
「人生を年齢で判断する価値観は必要ないと思う。長生きできたのも、枠に収めなかったことが功を奏しているのかもしれません」
世の中が決めた「何歳だからこうすべき」という枠を越えたからこそ、唯一無二の表現に辿り着かれたのですね。
「感動する気持ちがあれば、この世は楽しい。何かに夢中になっていると、人は救われるんだと思うんです」
この言葉を受けて、人生、ずっと感動していたいと強く思いました。私も絵に出会って、夢中になることの大切さを実感しています。
出典:篠田桃紅『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』(幻冬舎)
制作の裏側にある「無意識」の感動:私の感想
この本を読んで、これからの人生に対する不安が少し和らいだ気がします。
私たちは日々、外から与えられた価値観やしがらみの中で、自分を見失いがちです。生活するだけで精一杯で、本当に大切なものが見えづらくなっているのかもしれません。
ですが、この本を読むと、今まで自分がこだわってきたものが、いかに小さなことだったかに気づかされます。
特に、表現者として深く共感したのが制作についてのこの一節です。
「筆が勝手に書いている。創造したいという意識はありません。無意識のうちに自然に出来上がっていく。今まで見たことのない新しい境地の作品。過去の集積からこぼれ出たとも言えるでしょう。あるいはただの偶然とも言えるでしょう」
私も頭で考えすぎず、手を動かしている時に「手が勝手に動いている」感覚になることがあります。偶然にできた色の重なりや形に、自分自身が一番感動してしまうのです。
桃紅さんの言葉に触れ、「年齢を重ねた先には、一体どんな表現ができているんだろう」と、未来が楽しみになりました。
これからをどう生きるか:自然体で今を生きるだけ
高村光太郎の『道程』にあるように、私たちの前に道はありません。歩いた後に道ができるのです。
桃紅さんは「老いてなお道なき道を進む」強さと、同時に「できないことを受け入れる悟り」を教えてくれました。
- わからないことは考えない
- 生きている限り、人生は未完成
- 自然体で今を生きるだけ
- 何歳からでも始められる
「100歳になると無になるだけ」という言葉。死は決して怖いものではなく、老いて日常が無の境地に至り、やがて本当の無(死)を迎える。それは自然の一部として生きる、とても穏やかな流れなのだと感じます。
篠田桃紅さんの作品の紹介
篠田桃紅さんの作品は、以下の美術館の公式サイトなどで見ることができます。
まとめ:年齢を重ねるほど、自由はどこまでも広がっていく
冒頭で、「年を重ねるごとに不安になりませんか?」と問いかけました。
ですが、篠田桃紅さんの生き方は、その正反対にあることを教えてくれます。
体には変化がくるかもしれない。けれど、余計なこだわりや世間の枠を一つずつ手放していくことで、私たちの「自由の範囲」は、実は無限に広がっていくのです。
「自由の意味は、自らによって生きること」
自分の心地よい「ちょうどいい」を自分で決め、無駄なことさえも「良くなるための必然」として面白がる。そんな風に、自然体で今を生きることそのものが、人生という名のアートなのだと感じます。
感動も拒絶も、すべてを自分の根っこにして。
これからも、自分らしく日々をクリエイトしていきたいです。
