私たちは毎日たくさんのものに囲まれていますが、その一瞬の驚きや感動を、いつの間にか見過ごしてしまっているのかもしれません。
レイチェル・カーソンの名著『センス・オブ・ワンダー』を読みました。
自然について書かれたこの本は、創作やアート表現にも深くつながる一冊でした。
本書が伝えているのは、「知ること」よりも「感じること」の大切さです。
この本を読みながら、私は自分が制作している抽象作品や、日常の断片を集める創作活動との深いつながりを感じました。
この記事では、『センス・オブ・ワンダー』の感想とともに、抽象表現を制作する私自身の視点から、この本が教えてくれた「日常の中に美しさを見つける視点」について綴ります。
『センス・オブ・ワンダー』とはどんな本?
『センス・オブ・ワンダー』は、生物学者であり環境保護活動家でもあるレイチェル・カーソンによる名著です。
この本の中心にあるメッセージは、「知ることよりも、まず感じること」というものです。
カーソンは、自然を単なる知識 of 対象として見るのではなく、子どものような純粋な驚きの心で受け取ることの大切さを伝えています。
「知ることは、感じることの半分も重要ではない」
―― レイチェル・カーソン
この言葉は、決して知識を否定しているのではありません。
知識によって世界を理解すること。
そして、身体や心で世界を感じること。
その両方が重なったとき、私たちは世界とより深くつながることができるのだと思います。
「知ることより感じること」が心に残った理由
この言葉を読んだ瞬間、私は「これが自分の作品で表現したかったことなのかもしれない」と感じました。
私たちは何かを見るとき、
「これは何なのか」
「どんな意味があるのか」
と答えを探そうとします。
でも、心が動く瞬間には、必ずしも明確な理由はありません。
「なぜかわからないけれど惹かれる」
「ずっと見ていたくなる」
「この質感が気になる」
そんな感覚こそ、自分自身の感性と出会う瞬間なのだと思います。
五感をフルに使って、世界と対話する
『センス・オブ・ワンダー』を読んで特に印象に残ったのは、世界を情報として理解するのではなく、五感を通して体験することの大切さでした。
私たちは普段、目から入る情報を中心に世界を見ています。
しかし、本当に心が動く瞬間には、音、匂い、触れた感覚、空気の温度など、身体全体が関わっています。
- 雨の日に聞こえる音
- 肌に触れる冷たい霧
- 湿った土や落ち葉の匂い
- 小さな植物の細かな表情
そうした小さな感覚の中に、世界とのつながりがあります。
私が作品制作で大切にしている紙の重なりや質感も、単なる素材ではありません。
ざらつき、厚み、剥がれた部分。
そこには時間や記憶が残っています。
世界に飽きないために必要なのは、驚く力
カーソンが伝える「センス・オブ・ワンダー」は、自然を見るためだけのものではなく、日常を新しい目で見つめる力でもあると感じました。
「地球の美しさと神秘を感じとる人は、科学者であれ何であれ、
人生に飽きて退屈することはありません。たとえ生活のなかで苦しみや心配ごとに遭遇したとしても、
その人の魂は、内的な満足感と、生きていることへの新たな喜びへと、
自ずと道を見出すことができるでしょう」―― レイチェル・カーソン
この言葉は、私にとって創作そのものにも通じるものでした。
世界を注意深く見つめ、小さな変化や美しさを感じ取ることができれば、日常は決して退屈なものにはなりません。
それは特別な場所へ行くことではありません。
いつもの道。
見慣れた壁。
何気なく落ちている紙片。
そこにある小さな変化や美しさに気づくことです。
日常の断片を見るということ
私が作品で探しているのは、特別なものではありません。
- 誰かが使ったレシート
- 古本の切れ端
- 壁に残った剥がれた跡
- 時間によって変化した紙
- 雨上がりの光
多くの人が通り過ぎてしまうものに、私は惹かれます。
そこには、時間や記憶、人の気配が残っているからです。
断片を集めることは、自分の感性を記録すること
日常の断片を集めることは、自分が何に心を動かされたのかを記録することでもあります。
その小さな発見の積み重ねが、やがて作品を生み出す源になります。
なぜ私は「時間の痕跡」に惹かれるのか
私は以前から、「人はなぜ痕跡に惹かれるのだろう」という問いを考えています。
新品ではなく、時間を重ねたもの。
傷や剥がれ、変化した表面。
そこには目には見えない物語が宿っています。
私は、その時間の痕跡をコラージュや抽象表現として編み直しています。
「初めて見るように見る」という視点
センス・オブ・ワンダーを持つということは、見慣れた世界をもう一度新鮮な目で見ることです。
私は写真を撮るとき、「何を撮るか」よりも、「どこで心が立ち止まったか」を大切にしています。
私の写真は、景色の記録ではなく、心が動いた瞬間の記録なのです。
抽象表現は「答え」ではなく、感覚と出会う入口
抽象作品は、何かを当てるためのものではありません。
色、形、質感、素材の重なりを通して、見る人自身の感覚と出会うための入り口です。
カーソンが語る「感じること」は、自然だけではなく、アートにも通じているように思います。
『センス・オブ・ワンダー』から学ぶ、抽象表現と創作の視点
この本は自然について書かれた本ですが、私には「創作について考える本」として読むことができました。
世界は、新しいものを探さなくても、見方を少し変えるだけで驚きに満ちています。
これからも私は、日常の断片を拾い集め、そこに宿る時間や記憶、小さな驚きを作品へと編み直していきたいと思います。
English Summary
Rachel Carson’s The Sense of Wonder reminded me of something that is also central to my artistic practice: before trying to understand the world, we can first allow ourselves to feel it.
We often approach things by asking what they are, what they mean, or whether we understand them correctly. Yet some of the most meaningful moments begin before explanation—a particular texture, a change in light, a sound, a smell, or something we cannot fully explain but feel drawn toward.
Carson’s writing encouraged me to think again about the importance of experiencing the world through the senses. The surfaces and materials I use in my own work—layers of paper, worn edges, peeling surfaces, roughness, and traces left by time—are not simply visual elements. They carry sensations, memories, and evidence of change.
I am often attracted to ordinary things that might otherwise be overlooked: a receipt once held by someone, a fragment from an old book, marks left on a wall, paper altered by time, or light after rain. Collecting these fragments is also a way of recording what has made me stop and feel something.
For me, abstraction is not about finding the correct meaning of an image. It can be an entrance into our own perception. Through color, form, texture, rhythm, and material relationships, an abstract work can create a space in which viewers become aware of their own sensations.
To have a “sense of wonder” is perhaps to look at the familiar world as if encountering it for the first time. This idea continues to influence the way I photograph, collect materials, and make work from fragments of everyday life.
I do not need to search far away for something extraordinary. A small shift in attention can reveal that the everyday world is already filled with traces of time, beauty, and quiet surprise.
Related themes:
Ways of Seeing / Everyday Fragments / Materiality / Trace / Perception / Abstraction
